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漫画千夜一夜物語 三夜目
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水木しげる 「悪魔くん 貸本版」

90年代、悪魔と名づけられた男児に、日本中が揺れた
それらは教育や道徳、福祉といった社会では重要とされているものによって議論されたが、
私にとってそんなものの議論などてんで無意味で馬鹿げたものにしか見えず、
それよりも心から"悪魔くん"の誕生に大笑いしたのであった

「悪魔くん」、水木しげるさんの代表作にして、
その神秘的な物語と、登場する個性的な怪物たちの存在によって、
不気味な影と戦う勇気ある少年とそれに使える狡猾な悪魔は日本人に愛され、
マンガに、ドラマに、果てはアニメにと、心の中で育てられてきた
しかし、物語が年月を経て変わっていくように、
もとをただせば悪魔くんも、
地の底から光の元に這い上がってきた一片の不人気な怪奇マンガだったのだ

水木しげるさんも自伝に書いているが、本来なら5巻で完結するはずのこの物語は、
3巻だけで、その物語の幕を閉じている、理由は不人気
ではなぜ不人気なのか、理由は物語全てから我々が感じる負の感情と、
そして言い知れぬ闇にあるだろう、それは、マンガの墨塗りの濃さから感じるものでは
必ずしも無い

初期悪魔くんというのは、設定自体も狂気的なオカルティシズムに満ちていて
そもそも父が金持ち、その息子は一万年に一度生まれるかどうかの大天才、
かつ千年王国という地上の楽園を建設する救世主という輝かしいばかりの設定なのであるが、
救世主たる少年は、巨大ロボットにも乗らず、世界を救うべく美少女達と力を合わせて戦ったりもしない
ただただ朝から晩まで古代のカバラを研究したり、それこそ悪魔の召喚方法を実践したりする
いうなれば、かなりベクトルの偏った救世主なわけである

最近の悪魔くんというのは悪魔と契約を結んだ頭の良い男の子が、
悪魔メフィストと繰り広げる、悪との戦いを主に描いてるわけだが、
初期の悪魔くんはただ己の王国建設のために思念を置く、
エゴイスティックで人を自分の思惑通り動かす狂気の天才であり、
世界を滅ぼす危険性も孕んでいるという、まさに悪魔というべき存在だ
貸本版では、メフィストという頼れる存在は息をひそめ、ただただ
超人離れした悪魔くんの活躍によって話が進んでゆく(挙句この少年魔法まで使う!)
彼には使徒という仲間がいるが、初期で姿を見せたものはたったの二人、
それも、一人はそのふりをしているだけの、なんともさみしいパーティなのだ
しかし、それでも彼は戦い続ける、世界征服を目ろむ悪魔の手先や、
この世にとってはまったく不可視の神という存在と

このマンガの思想の奥に潜んでいるのは紛れも無いキリスト教の思想で、
12使徒、救世主、といった概念もさることながら、
千年王国という本来ならば再来したメシアによって
もたらされるべきものを、作り上げようとしているものは
ほかならぬたった一人の狂気に満ちた少年である
しかし、救世主たるべきものはいかにして救世主たるべきなのであろうか、
完全として存在するものを救世主というのであれば、
合一視されるべき神とは一体なんなのだろう
その昔、神をそそのかしてヨブに不条理という名の悪夢を見せたのは、
他ならない悪魔である(*1)
だが、その悪魔も神の二律背反的な側面として見れば、また神と合一視するべきだろう
仮に、悪や正義などといった二元論的考え方で、神は存在するのではないとしたら
一切の不合理と共にあるのが神であり、悪魔といえるのかもしれない
悪魔くんが目指すものは自己満足であり、不合理であり、万人の為の都を建設するために
万人を殺す権限を持つ者だ

貸本版で、その終焉は呆気なく下される、
神童は神でも悪魔でもなく「不人気」というレッテルに負けたのだ
そもそも、年を重ねてもハッピーエンドが訪れない物語なのだが、
貸本版のは特にひどい終わり方である、
それでもその野望は滅びない
もしかしたら、千年王国は救世主と共にあるものではなく、
それを信じるもの達と共にあるのかもしれない

*1
ここいらへんの話は、C・G・ユングの「ヨブへの答え」等を
参考にしてもらえるといいかも知れません、
私の意味不明な私的解釈より分かりやすく
(といっても一読しただけでは難解ですが)書かれています

追記
初期のダークな悪魔くんが読みたいなら最近復刻されたものの方が手っ取り早いです
3冊まとめて載ってるし安いので買ってもいいと思いますし、
ただ、アニメ版等しか知らない人はかなり失望されるとおもうので、そこいらへんは注意
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by unit-731 | 2007-06-19 21:57 | 企画



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