カテゴリ:企画( 4 )
漫画千夜一夜物語 三夜目
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水木しげる 「悪魔くん 貸本版」

90年代、悪魔と名づけられた男児に、日本中が揺れた
それらは教育や道徳、福祉といった社会では重要とされているものによって議論されたが、
私にとってそんなものの議論などてんで無意味で馬鹿げたものにしか見えず、
それよりも心から"悪魔くん"の誕生に大笑いしたのであった

「悪魔くん」、水木しげるさんの代表作にして、
その神秘的な物語と、登場する個性的な怪物たちの存在によって、
不気味な影と戦う勇気ある少年とそれに使える狡猾な悪魔は日本人に愛され、
マンガに、ドラマに、果てはアニメにと、心の中で育てられてきた
しかし、物語が年月を経て変わっていくように、
もとをただせば悪魔くんも、
地の底から光の元に這い上がってきた一片の不人気な怪奇マンガだったのだ

水木しげるさんも自伝に書いているが、本来なら5巻で完結するはずのこの物語は、
3巻だけで、その物語の幕を閉じている、理由は不人気
ではなぜ不人気なのか、理由は物語全てから我々が感じる負の感情と、
そして言い知れぬ闇にあるだろう、それは、マンガの墨塗りの濃さから感じるものでは
必ずしも無い

初期悪魔くんというのは、設定自体も狂気的なオカルティシズムに満ちていて
そもそも父が金持ち、その息子は一万年に一度生まれるかどうかの大天才、
かつ千年王国という地上の楽園を建設する救世主という輝かしいばかりの設定なのであるが、
救世主たる少年は、巨大ロボットにも乗らず、世界を救うべく美少女達と力を合わせて戦ったりもしない
ただただ朝から晩まで古代のカバラを研究したり、それこそ悪魔の召喚方法を実践したりする
いうなれば、かなりベクトルの偏った救世主なわけである

最近の悪魔くんというのは悪魔と契約を結んだ頭の良い男の子が、
悪魔メフィストと繰り広げる、悪との戦いを主に描いてるわけだが、
初期の悪魔くんはただ己の王国建設のために思念を置く、
エゴイスティックで人を自分の思惑通り動かす狂気の天才であり、
世界を滅ぼす危険性も孕んでいるという、まさに悪魔というべき存在だ
貸本版では、メフィストという頼れる存在は息をひそめ、ただただ
超人離れした悪魔くんの活躍によって話が進んでゆく(挙句この少年魔法まで使う!)
彼には使徒という仲間がいるが、初期で姿を見せたものはたったの二人、
それも、一人はそのふりをしているだけの、なんともさみしいパーティなのだ
しかし、それでも彼は戦い続ける、世界征服を目ろむ悪魔の手先や、
この世にとってはまったく不可視の神という存在と

このマンガの思想の奥に潜んでいるのは紛れも無いキリスト教の思想で、
12使徒、救世主、といった概念もさることながら、
千年王国という本来ならば再来したメシアによって
もたらされるべきものを、作り上げようとしているものは
ほかならぬたった一人の狂気に満ちた少年である
しかし、救世主たるべきものはいかにして救世主たるべきなのであろうか、
完全として存在するものを救世主というのであれば、
合一視されるべき神とは一体なんなのだろう
その昔、神をそそのかしてヨブに不条理という名の悪夢を見せたのは、
他ならない悪魔である(*1)
だが、その悪魔も神の二律背反的な側面として見れば、また神と合一視するべきだろう
仮に、悪や正義などといった二元論的考え方で、神は存在するのではないとしたら
一切の不合理と共にあるのが神であり、悪魔といえるのかもしれない
悪魔くんが目指すものは自己満足であり、不合理であり、万人の為の都を建設するために
万人を殺す権限を持つ者だ

貸本版で、その終焉は呆気なく下される、
神童は神でも悪魔でもなく「不人気」というレッテルに負けたのだ
そもそも、年を重ねてもハッピーエンドが訪れない物語なのだが、
貸本版のは特にひどい終わり方である、
それでもその野望は滅びない
もしかしたら、千年王国は救世主と共にあるものではなく、
それを信じるもの達と共にあるのかもしれない

*1
ここいらへんの話は、C・G・ユングの「ヨブへの答え」等を
参考にしてもらえるといいかも知れません、
私の意味不明な私的解釈より分かりやすく
(といっても一読しただけでは難解ですが)書かれています

追記
初期のダークな悪魔くんが読みたいなら最近復刻されたものの方が手っ取り早いです
3冊まとめて載ってるし安いので買ってもいいと思いますし、
ただ、アニメ版等しか知らない人はかなり失望されるとおもうので、そこいらへんは注意
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by unit-731 | 2007-06-19 21:57 | 企画
漫画千夜一夜物語 二夜目

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藤子・F・不二雄「異色短編集1」ミノタウロスの皿

異色というだけあって内容はドラえも・・・なんたらよりかなりディープ
読んでておもしろいのが、藤子ファミリー(2人しかいねえけど)の内でも
描かれる異色短編にきっちりそれぞれの色を出していることで
Aの方が現実世界で人の狂気や偏執によって巻き起こる惨事を描く一方、
Fの方は現実世界(もしくは未来)で超常的事態によって巻き起こる惨事を描くという
きちんと住む庭が区分けされている関係にあることだろう

事実、表題作である「ミノタウロスの皿」(*1)では
宇宙探査が可能となった未来を描いており、
宇宙船の記述や主人公のセリフからも
『この時代に生きる人類』はかなりの技術力を要していることが読み取れる
ただ、作品群一貫していえることは、話の主流として『未来の暗示』や
『SFという手法を用いて作られた世界での恐怖』を読ませているのではない、
先ほどの「ミノタウロスの皿」のラストシーン、
主人公がビフテキほおばりながら流す涙こそ物語最大の答え、
つまりは未来の恐怖ではなく現代の悪夢、
我々が内包している狂気であるともいえるのだ

この世は我々から見れば規律に則った疑うことの無い世界と言えよう、
しかしこの認識は我々の生活に対して答えを出しているわけではない、
ただ単にこの世界しか認識できないからそうと思っているだけで
すぐそこに非常識、もしくは超認識というべき未知の世界への扉が
口をあけて待っているかもしれない
その世界へ行ったあなたに元の世界を紛れも無き『世界』と認識できるだろうか
もしや本当の悪夢というのは我々の暮らす、まさに『この世』であるのかもしれない
藤子・F・不二雄の描く悪夢は我々の心が見ている幻影なのであろうか?
それとも我々が生きている現実なのであろうか?

*1(ネタバレあり注意)

宇宙探査が可能になった未来で、宇宙探査船が故障した乗組員が
惑星に不時着するところから、この話は始まる
空気があり、生活様式も地球の(特に古代オリエント文明)に酷似しているその星で
ただ一つだけ違うもの、それはこの星の支配者が進化した牛であり、
家畜とされているのが人間ということ、
やがて救助を待つ主人公は家畜として飼われている美しい女、ミノアに恋をするが
ミノアは「ミノタウロスの皿」という家畜(この星での人間)を料理して食べる、
名誉ある祭りの生贄に選ばれていた、主人公の思いもむなしく、
愛しのミノアは会場に到着し、祭りは実行されてしまう
最後のシーンは、救助された主人公は宇宙船でミノアのことを思い出し、涙を流しながら
宇宙探査での念願であったビフテキをほおばるという
なんともシニカルな終わりとなっている
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by unit-731 | 2006-10-03 21:34 | 企画
漫画千夜一夜物語 一夜目
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墓場鬼太郎 (1)

あれ?鬼太郎って「ゲゲゲの」じゃないのというあなた
そんなあなたは真人間です、どうぞ存分に太陽を浴びて生きていってください!
それはさておき、このタイトル実をいえば鬼太郎が始まった当初のころのタイトルなのである
まだ水木先生が恐怖劇画家と呼ばれ、
「オモチロイ!」なんてお茶らけるずっと前のなので、
タイトルも大人向けのビターなものとなっているのだろう

そんな初期鬼太郎だが、
始まりはなんとも陰々滅々たる一冊の貸本漫画(*1)から始まった、
その名も「妖奇伝」、これがまた見ただけでおどろおどろしい幽霊の表紙なので、
「この本を盗んだ奴は変死です!」と本が視覚に訴えてる気がしてならないのだが
そんなこの本に収録された「幽霊一家」という長編が鬼太郎の初出というべき作品なのである
もちろんタッチは恐怖劇画、いたるところがベタで塗りつくされ、もう人なんだか影なんだか分からない
それに加え、話は死ぬほど暗い、
これを読んだ後に「その後のゲゲゲの鬼太郎」なんぞをよんだ日には
これ、ただの水木先生の妄想だろ、と思えるほどに暗く、
まさに「地獄」という言葉がピッタリな出来である

しかし、近年までこの初期鬼太郎を読むのはすこぶる難しいことであった、
なんせ貸本というというシステムをとっていたため、あまり市場に出回ることが無い上に
古くなって捨てられるというケースが非常に多かったからだ、
こんな経緯があるため、初期鬼太郎シリーズを読むには万単位の金が要った時期もある
よって少年時代の私はいつも本で
この貸本の写真と一コマ二コマ貸本から引用された漫画を見ては切ないため息をついていた
だが、つい最近になって新刊文庫のコーナーをあても無くぶらぶらしていたとき
角川のコーナーに何の前触れも無く、
この貸本時代の鬼太郎が無雑作にポンと置かれていたのだ
どうせ巻頭だけカラーで後は白黒のいまいちな出来だろ、と高をくくって読んでみたら、
これがまたきっちりとした復刻印刷で貸本の色合いが良く出ている上に、
巻頭だけじゃなく貸本でカラー刷りだった部分まで完全再現という
まさにオバケ復刊なのであった

今の時代に1000円切って新品の初期鬼太郎にありつける私のようなフリークは幸せである
また、もし興味を持った方はぜひ店頭で手にとって、
鬼太郎のダークな一面に触れてみるのもオモチロイかもしれない


(*1)読んで字のごとく、読みたい本をお金払って借りられるというシステム
有料の図書館と思っていただけると分かりがいいだろうが、
中には貸し本屋にしか配給されない本というのがあり
多くの貸本漫画はその部類に入るといえるだろう、
えてして貸本漫画は作者の身の振りようで絶望的なストーリーなどになることが
往々にしてよくあり、拷問のシーンなどがでてくると見ているこっちが死にたくなる出来になっていることがままあったりする
今はこのようなシステムは廃れており、営業している貸し本屋は皆無であるといえよう
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by unit-731 | 2006-09-30 22:14 | 企画
現代文学夜話外伝 オタク本死闘編 ~第一夜~
何時ごろからだろう、
ともすると人は電車で助けた女からエルメスを贈られ、
ともすると人はオーストラリアで愛を叫ぶようになった、
昔から愛だの正義だのとやらは好きじゃなかったが、今ならはっきり言える
人間愛なんてクソくらえだ!俺はハダカがユニフォームなんだよ!
みんなまだ懲りてないのか!正義だの愛だの人助けだの言ってっから
50万もする英会話教材なんか買わされるんだ!
と、あんまり関係ないこといってまとめてみたが、いかがでしょうか細木先生

ここではそんなハッピーな現代社会でいったい我々は何を読んできたのか、また、読めばいいのか
と言ったことを独断と偏見で語っていこうと思う、ちなみに私が基準であるから、
絶対に普遍的なことは言えないので始めに断っておく、ごめんなさい

まず第一夜目から「萌え」書籍について、出たとこ勝負でやってみることにするけれど、
いまどき「萌え」ってあんた、タイプしてて赤面してしまった
映像メディアは馬鹿の一つ覚えで、今でもなにかあればテロップに「萌え萌え~」と入れたりするのだが、
アレを見てるとアメリカ映画で使い古されたゾンビ物が、メキシコ映画あたりでデッドコピーを重ねて,まだ上映されてる気持ちになる、お前はブロリーかよ!

ところがどっこい、映像メディアにとどまらず活字メディアまでブロ・・・おっと「萌え」は
まだまだ健在である、というより活字メディアの「萌え」無しに、いまの映像メディアの「萌え」を語ることは出来ないので、
現状の「萌え」ブームの元凶である活字メディアの方から書いていこう
元を辿るならかれこれ3年前、萌える英単語「もえたん」(注1)までさかのぼる、
いま見るとそんなに新しい気はしないかもしれないが、昔はけっこう盛り上がっていた、
挿絵の可愛さやストーリーのドタバタ加減、なにより英単語についている例文の馬鹿さなどから、
徐々にネットのニュースサイトなどで人気が出始め
ついにはメディアも注目するほどの本になったのである
当時のオタク学生たちとしても例外なく、この本をバイブル扱いし
中にはわざわざネタとして学校に持ってきて、知り合いにこっそり見せ、ウヘへなどと笑いあっていた、ちなみに私も一冊持っている
この事例は三才ブックスの先見の明というよりかは、偶然の産物(注2)と言った方がいい
たまたま時代の流れ(注3)にマッチしてアドバンテージを獲得した好例である

このオバケ本の登場により出版元の三才ブックスをはじめ
数々の出版社が二匹目のドジョウを狙うこととなる、
はじめは傍観の立場をとっていた映像メディアも参加して
賑わいを見せ始めるのだが、それは次回にとって置こう


*注1
三才ブックスが生み出した元祖萌え書籍、POPさんというイラストレーターのデザインによる
"虹原いんく"という女の子が主人公、すきな男のために怪しげな力で、
"ぱすてるインク"とかいう魔法少女に変身し,
勉強を教えたり教えなかったりして、いっしょに大学を目指すといった物語
この主人公、どう見ても小学生にしか見えないのだが、設定年齢は17歳
誰もが警察なんかにしょっぴかれたくないらしく、いささか無茶な設定である
しかして、設定なんかハナクソ程度も気にしちゃいないロリコン男性達にはかなりの人気で、
僕の知り合いも当時、この少女にくびったけであった

*注2
まぁ歴史も偶然の積み重ねかもしれないが・・・

*注3
ネット文化の発展や、オタク向けの絵柄の好み、などなどが挙げられる
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by unit-731 | 2006-06-15 00:35 | 企画



Alcatraz Library      -戦慄の暗黒読書ブログ-
by unit-731
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